2012年8月6日月曜日

今日はブレーズ・サンドラールふうに書いて

  

夜になっても28度もある

川沿いをジョギングしていると
もう
汗でびしょびしょ
なんだか東南アジアの
湿った夜を走っているような気持ち
ニッポンだってアジアだが
それよりもやさしい
艶のある汗の女たちが闇の中にいるような
夏の夜

あいつも
あいつも
ぼくがクーラーをきかせた部屋に籠もって
読書でもしたり
詩かなんか書いているとでも
思っているかな

毎週のように外国に飛んだり
帰ってきては走ったり
ラムのバーベキューの肉を仕入れに行ったり
鰻三昧の夜を過ごしたり
かわいい娘たちとのカクテルの宴に
ちょっと顔を出しては
車で11時前には家に送ってもらったり

そんな日々を
30年ほど続けているとは
きっと
思わないだろうな

他人に見えるようには
だれも生きてはいないもの
自分と同じように
感じたり
考えたり
生きていると思ったら
大まちがい

空気のすっかり止まった夏の蒸し暑さの中を走り続けられる人間たちは
それができない人間たちとは
まったく違った価値観を持っているさ
そこから見える世界はまるで違っている
帰ってシャワーを浴び
プルーストとレーモン・ルーセルとハンナ・アーレントと
シャトーブリアンとタッソーと
ジャン=ピエール・リシャールとジェラール・ジュネットを読み続け
モンテーニュとヘンリー・ジェームズと
フォークナーも続けながら
中村真一郎の四部作や戦後風俗小説の目ぼしいところも継続するのは
なかなか体力がいる
そうしながら昭和期より明治期の短歌のほうがよほど面白かったと
再発見しているところなんだよ

明日も走るぜ

今日はブレーズ・サンドラールふうに書いて
おしまい



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