八月二十五日
秋渚わが跡ひとつなく白し
八月二十六日
秋爽や恨み忘るるにはあらず
綿柎開く民家園にて蚊に喰はる
八月二十七日
外国人妻パトリシア娶りしや
花茗荷俳句には自我無用なり
水引のくつきりと赤き新学期
宗祗忌や箱根湯本に湯を浴びに
星月夜宇宙ステーション行く速さ
脳洗ふごとき音させ稲の花
芭蕉背にソフトクリーム来るを待つ
なにとなく軽んじて遠く見るカンナ
鳳仙花ジョギングの足ふと弱め
秋団扇スカイツリーの見えかくれ
秋蝉の鳴く激しさよ死ヲ思ヘ
珈琲におはぎなど添へて好い女
八月尽また人生に戻らうか
あほらしきせつなき夏のまたひとつ
八月二十八日
わづらはし短歌帖閉じトマト食ふ
ぢりぢりと啼く蝉啼かし啼かぬ蝉
松茸もまたセシウムが先に喰ふ
休暇明け人なき浜のジユース缶
秋の朝五句ほど作り朝餉かな
ホップ挘(も)ぐ手つきも知らずもう一杯
八月三十日
糠蠅の集まるところ永田町
八月三十一日
青瓢入れるべき酒のどれとどれ
明月やデモに行く人行かぬ人
秋めくやベルグルンドの「レニングラード」
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