ある国の兵士の
ドキュメンタリードラマだ
一日の仕事が終わって
兵舎から出てきたところから
はじまる
屋台のならぶところで
彼はなにか手に取り
買おうとして
ちょっと不器用に
どしん!と
レジ台に置いてしまう
店のおばさんが
乱暴にしないでよ
どしん!と音したでしょ
まったく
乱暴なんだから
そう言うと
まわりの女たちも
わあわあ言う
兵士は口を歪めて
なにごとか
抗弁したがっていたが
けっきょく
なにも言わないで
だまって金を払って
離れていく
まったく
乱暴な兵隊だよ
ああいう奴には
おあつらえむきだよ
軍隊が!
女たちは言う
そのあと
ナレーションが入る
―この兵士の最近の仕事は
国内の反乱分子の処刑
今日も午前に
三人の青年を処刑した
ひとりは未成年の女子だった
そうして
この兵士が
女子の背後から
後頭部に銃をむける写真と
処刑後
頭が西瓜のように
ぱっくり開き
脳が飛び散った
女子の死骸の写真
…きびしい
ドキュメンタリードラマだ
いいものを見たと思った
真実か
真実に近いものは
鋼鉄のような手触り
まずは
その手触りから始める
温かい毛糸の暖色のカバーはいらない
かわいいキャラクターの付いた
ウレタンの被いもいらない
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