人が死ぬと
鍋やカップが押しよせて
いつまでも台所の戸棚に居座ったりする
買ってあげたもの
真新しいもの
まだまだ使えるもの
捨てるには惜しいもの
故人が大事に使っていたもの
そんなあれこれに
捨てるとか
処分するとか
何度も尺度を押しつけてはみるが
いつのまにか
尺度も戸棚にしまい込む
カップひとつさえ
店をめぐって
時間をかけて
選んでいたのが目に浮かぶ
持ち物という
厖大な時間のかたまりを
とつぜんお裾分けされ
とりあえず
とりあえず
などと思いつつ
時間だったものを
思いや気持ちだったものを
エネルギーや
いのちでさえあったものを
台所の戸棚にしまう
生者たち
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