古くから農民の家系の
峰曽田くん
ぼくは彼のことを
ミネソタくん
と呼んで親しんできたが
ひさしぶりに会って
お酒も
コーヒーも
飲まずに
真水を飲みながら
田植えのはなしを聞いた
(ミネソタくんは
(摂れないわけでもないが
(刺激物が一切ダメ
(すぐに調子が悪くなる
(だんだんと
(ただの水生活になった
つらかった
むかしの田植え作業のはなし
つらつら
聞くうちに
あかるい色のアゲハが来て
わあキレイだ
ううんキレイだ
と言っているうち
1964年に
田植え機第一号が出来た
とはなしが進み
へええ
新幹線とともにねえ
東京オリンピックとともにねえ
と驚く
ずいぶん近いはなしだ
むかしのようでも
つい
このあいだのこと
ながい農耕の歴史のなかでは
「でも動力がついてなかったんだよ
「手押しだったから
「半分機械、半分用具みたいなものかな
動力付き田植え機は
1968年にできたそうな
へええ
ほんとに
ついこのあいだの
こと
だね、そりゃあ
たった一台
二、三時間動かすと
それまで十人がかりで
半日かかった作業が
済んでしまう
驚きモモの木で
全国にバアッと広がったそうな
それからは
手押し型から
トラクター型にかわり
赤外線や
レーザー光線使用の
無人タイプ
GPS使用の無人タイプまで
進んできたそうな
農作業用パワードスーツまで出来て
今後はさらに
すごいことになるかも
ミネソタくんは
また農作業に戻っていったが
ぼくは
田んぼのわきで
のんびりし続けた
手伝うもなにも
シロウトのぼくなんか
わきで見ているのが
いちばんの
手伝いみたいなもんだ
ミネソタくんは
ワイヤレスの
イヤホンマイクをつけて
ときどき
ぼくのスマホに
はなしかけてくる
なんだ
かんだと
スマホな農作業だ
また
アゲハが飛んでいる
のんびりと
坐って
水田を眺めているだけだが
田植え機のはなしは
ぼくのあたまの中では
革命だったよ
革命なんて
そんなものかもしれない
当然のように
あっちこっちに起こってしまっていて
でも
じぶんだけ
知らないでいた
根底の根底の変化の
ふいの流入
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