2013年12月21日土曜日

鬼がね、ずっとぼくの顔を覗き込んでいたんだよ


  
ふとっちょのTさんは風呂に浸かりすぎて
からだが火照りすぎたものだから
もう寒い時期だというのに
タオルを敷いて
裸で床に横になっていたのだそうな

そうしたら
いつの間にか寝入ってしまい
からだはずいぶん冷えてしまったのだろう
夢のなかで
氷の国にいて
寒い、さむい、と抜け出そうとするけれど
そのたびに
つるん
つるん
と滑って氷の国に転がり落ちたとか

からだが冷えると
氷の国の夢なんか見てるんだから
われながらケッサクだよ
からだの状態がそのまま夢に出るんだから…
と言ったあとで
Tさん
ちょっと黙り
また話し出した

だけど
こんなのは御愛嬌だ
だいぶ前のこと
からだの急変で死にそこなった時
意識を失って
危篤状態のあいだにね
鬼がね
ずっとぼくの顔を覗き込んでいたんだよ
目が覚めるまでずっと
左から覗いたり
右から覗いたり
鬼が額のあたりにいて
ずっとぼくを見おろしていたんだ
意識を失って人事不省でも
夢は見続けたりするものなんだか
それとも
あんな時に夢なんか見ないのだとすれば
ほんとの死後の世界の
入口かなんかだったのか
あれは…
                             
   



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