夕暮れどき
高原の美容室に入った
白い床
白い壁
鏡のまわりは厚いガラスの壁で
すこし先の谷に目は向かい
そのむこうには
山々が見える
谷は
夕暮れからは
巨大な闇となる
ほかに客はいない
美容師も助手もわずかで
しずかな
仕事の音がしている
髪を洗われ
カットされ
また洗われ
頭皮も
首も肩も
マッサージされ
夕暮れどきの
高原の
美容室の
なんと
豪奢な慰安
これ以上の
なにがあるかと
思いめぐらしてみるが
忘れてしまっている
すべて
ほかのことは
なにもかも
すべて
忘れてしまっていて
谷の闇が
ほんとうに
深い
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