風邪なんて
病気の中でも
いちばんちっぽけなもの
なのに
ちょっと罹ると
どうしてあんなに
さびしく
やるせない気持ちに
なってしまうのだろう
このあいだ
ひさしぶりに風邪をひいて
やはりさびしく
やるせなく
どこかへ
かぎりなく陥っていくようで
死よりも
せつないようだったが
思い出していた
むかしのあのアパートで
あるいは
あの部屋で
あのマンションで
やはり風邪をひいて
寝入っていた時のこと
そのつど違う天井を見ながら
こんなふうにして
いつまで生きていけるんだろう
などと思い思いしながら
あれらの時間を
どうにか繋ぎ繋ぎして
生きのびてこれたわけなのか
温かいものを作ってくれたり
ようすを見に来てくれたり
鍵音をさせて帰宅し
ただいまぁ
だいじょうぶだったぁ?
などと声を届かせてくれたり
そんなふうだった
何人かはもう去ってしまい
何人かは死んでしまって
どうしてだか
まだひとり
生きのびているじぶん
と思うと
いよいよ
さびしくなっていくよ
いよいよ
やるせなくなるよ
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