2014年1月26日日曜日

咳嬰


熱もだるさもないのに
咳ばかり
咳ばかりひどく
咳喘息というのか
そんな症状がずっと続いて
死ぬかと思った
死ななかった(ざんねん!)

夜も咳込み続け
朝まで続いて
起きたら起きたでまた咳込み続け
さすがに体もくたくたになり
人事不承となったが
死ななかった(ざんねん!)

あらゆる病気や異常や欠損を
ぜったいに完治させまいと
決意して余生を送っているので
病院になんか行かねえダ(なんで
方言っぽいんダ、ここだけ?)
咳のほうで
根負けしたようで
だいぶ治まってきたダ

んだけども
はじめて「咳」ちゅうものを
よーく考えたな
ゴホゴホ咳込みながら
特に漢字をよーく考えた
口に亥っていうのは
なかなか要を得ているナ
亥が口から胸にかけて
暴れまわる図だったんだナ

でもこれウソ
漢和辞典を見たら
亥は音だけのことだし
この字は形成文字で
赤子の笑うさまを
もともと意味するらしい
だいたい咳には
動詞として「幼児が笑う」
名詞として「幼児・子ども」
という意味もある

なあんだ
と思いのなかの亥は
勝手に駆けまわるばかり
漢字を借りて生きているだけの
日本人の情けないことよ

と漢和辞典を眺めるうち
咳嬰(がいえい)
=ようやく笑いはじめた幼児
とか
咳唾成珠(ガイダたまをなす)
=①せきやつばまでが珠玉となる。
長者やすぐれた人の言論が
尊ばれるさま。
=②一句一句がみな珠玉のように
美しい。詩文の才能が豊かな
たとえ。
という熟語に出会った

咳嬰とは
うつくしい語
咳喘息にでもならなければ
出会わなかったよ

幼児が
胸のなかで
笑い続けていたという
ことだったよ




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