人間が死体になるというのには表現上のあやまちがあるが
生体はある時点から死体に変わる
死体に変わるとつまりは不要物になりゴミになる
死体をゴミとはなんだという良い子の発言が聞こえてきそうだが
だったら焼かれたり埋められたりしないように
必死におうちに持ってお帰り
ほうら出来ないじゃないか
そういう対象をゴミというのだよきみ
死体以前のからだを運び続けながらきみはおうちの最寄駅に着く
死体以前のからだを運び続けながらきみは帰宅という作業を終える
作業御苦労様
数えきれないほどやってきた作業だと思いたいかもしれないが
数えればちゃんと数えられる回数しかしていない作業
帰宅作業以外のすべても同じ可算作業
種類も無数だと言いたいかもしれないが無数などというものは存在 しない
すべて可算作業
それらをぜんぶ合わせたものがきみのいわゆる人生
いわゆる
いわゆる
いわゆるきみ
いわゆる人生
最期にゴミを出してもらう
ということが来るが
まあ
それで最期になるわけではない
焼却後にいろいろやりたがるわけで
ね
人間は
いわゆる人間は
ともあれこんな待合室で
きみがこんがり焼けるまで
寿司を喰って待っている死体以前たちのあいだに
死体以前のからだをまぎれ込ませている
ぼく
もっといい寿司だったらなあ
うまくないぜ
このイカも
タコも
まあきみが頼んだわけじゃない
きみは焼き魚
じゃなくって焼き人間になっていっている最中だから
罪はないよな
この寿司について
だけは
きみに家族がいたなんて
知らなかったが
まあ遺伝子的に近似した生体を家族と呼んでみているだけで
まあそれを家族と認めたかのようなふりをこっちもしてみているだ けで
ともあれ
その
いわゆるきみのいわゆる家族が
きみの燃え残りをくそおもしろくもない白い壺に入れて
コンクリートの冷たく暗い小部屋に入れようとするのだろうと思う
そうでなくて他のかたちをとっても同じこと
要はぼくはきみの燃え残りにタッチしないということ
きみとの物質的な接点は
ここ
このうまくない寿司で終わる
ということ
あ
骨拾いにも加わるから
もうちょっとつき合いが延びるかな
でも焼け残った骨はだれにも似ていないからなあ
大腿骨の中の繊維状な部分がのぞいていたり
頭蓋骨の裏側が薄赤く色づいていたり
そんなのは
きみじゃないからなあ
熱くなった骨の粉も飛んでいるし
なあ
なあ
このうまくない寿司で
おさらばと行くかな
あとはいわゆるきみのいわゆる家族にまかせて
おさらば
いわゆる抜きの
おさらば
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