電池の切れた点滅灯も
ラヴレターも
思い出しもしない
静かな朝
ティーカップに
水を入れて
大きな庭のむこう
苔蒸した大理石の手すりまで
やはり
行かないで
崩れかけた
近くのアポロンの彫像の
わきのテーブルに
死んでいる
玉虫をつつきながら
あゝ
こんなに雲が厚いから
今日は
降るかもしれない
出かける用事はないが
降るかもしれない
…思いながら
飲むというより
啜っている
ティーカップの
水
思い出さない
たくさんのことが
ある
静かな朝
誰もいない
朝
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