ひとりで
長くもないが
短くもない時間を
パリで過ごしてきたが
ヘンな感じ
40年も前から
この街には
たびたび行っていて
いい加減に数えてみても
90回近くは
行っている
何人もの
パリ人たちに導かれて
あっちを知り
こっちを知り
そんなふうに馴染んできたが
ヘンな感じ
彼らのほとんどが
もう
今のパリには
いないから
みんな老いてしまって
ほとんどが
死んでしまって
どの街角にも
どの広場にも
通りにも
大通りにも
彼らとの思い出がある
瞬間の顔やしぐさや
その時の会話の一端や
問題事さえもが
あざやかに浮かぶ
フランス人だった
彼らが消えてしまって
ずいぶんヘンじゃないか
今では
フランス人でないぼくだけが
彼らとのパリを
守りつづけている
みんな
フランス人をやめてしまって
パリの知識も
フランス語も捨ててしまって
今ごろ
どこをのんびり
漂っているんだか
ヘンな感じ
フランス人でないぼくだけが
ぼくこそが
彼らとの
あんなパリや
あんなフランスを
たったひとりで
守りつづけている
忘れないために
もう
知り尽くしているあれらの場所に
まだまだ
出かけて行って
彼らのいない
街角を
広場を
通りを
大通りを
見つづける
横切りつづける
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