ふしぎなものだ
じつは
ついこの間の旅よりも
とおい昔の
旅ともいえないような旅の記憶が
秋の野を這う霧のように
眼界に漂っている
その時いっしょだった
いまはもういない
人たちの声が
すぐ近くで
いまも響いている
どこに
わたしはいるのだろう
いなくなった
あの人たちではなく
わたしこそ
いま
どこにいるのだろう
ふしぎなものだ
生きのび続けていると
だんだん
わかってきたりする
時間は
たんに過ぎ去るものでなどなく
ここが
あそこと違うのも
ただ表向きに
すぎないということが
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