2014年12月4日木曜日

いつか存在するわけではない…



  
死んだ人と掃除をしていたら
掃除がすこし温まってきて
あたりはうっすら
春のお昼間のようになった

(ちょっと
(お茶にでもしましょう

そう誘うと
死んだ人はうれしそうに微笑んで
置時計を指さすと
秒針は動き出し
音を立てはじめた

(それでも
(また生きるわけではありません

うれしそうなままで
死んだ人は言い
温かみの中に
佇み続けていた

置時計の後ろの鏡に
やはり
私は映っていないのに気づき

(私にしても
(いつか存在するわけではないんだ…

つぶやくと
死んだ人はうれしそうなままで

(そう、あなたときたら
(死にもしないし
(生きてさえいない…

そう言って
ティーカップに手を
のばした




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