用があって近くの大きな家具屋に行った際に
ソファーの売り場をまわって座りくらべをしてみた
うちにもソファーはあるが
ひとり座りのパーソナルソファーとかいうものはないので
遊び半分にあれこれ座ってみたら
どうしてどうして
これがなかなか気持ちがいい
からだがスッポリ包まれる感じで
長い時間しずかに本を読んだりするのにはよさそう
座りくらべてみると
背もたれの傾きぐあいや座面のやわらかさがひとつひとつ違い
いざ買うとなってどれか選ぶのはけっこうむずかしいとわかった
すぐに買おうというわけでないから
本当に買おうというわけでないから
選択の決断はしないでいいまゝ
あれに座ったりこれに座ったりして売り場をふらふらし
小一時間などアッという間に経ってしまう
それにしてもいろいろなソファーがあるもので
いろいろな快適さの試みとかたちがあるもので
たかがひとり座りのソファー選びというだけなのに
豊かすぎてあっぷあっぷしてしまう
たとえばこれかあれに今日決めてしまって
来週には届けてもらうとして
窓のわきに置いて陽のうららかな休日にでも
ぶ厚い本を膝に開いて何時間も読み耽るとしようか
その時間だけは仕事も生活もすべて忘れ去ってしまうことにして
子どもの頃のように本当に本だけに没入するとしようか
そうしたらなんという幸せ
なんという充実とやすらぎ
外では陽光の中で人が時どき行き過ぎ
蝶が飛び花が揺れ車や自転車もあこがれのように過ぎる
腰や背が疲れない快適なひとり座りの椅子に支えられて
限られた時間でも本の世界にすっかり埋没できる
こんなにも本が好きな生まれつきなのに
大人になってからはたったの一度も本に埋没できたことのない自分 の
まるで成仏をみずから祈りでもするかのように
フワフワでありながら適度なかたさもあるソファーに座って
瀑布の滝壺への急降下場所のそう遠くもない残りの生にあって
わずかばかりの慰安を取り戻し直すかのように
目立つところの埃さながら心残りを拭い取っておこうとするかのよ うに
0 件のコメント:
コメントを投稿