本の山がいくつか崩れて
島木赤彦の歌集『柹蔭集』が出てきた
ちょっと開いた頁に
《湯の中に静もる時は耳に馴れし谷川の瀬の聞こえつるかも》
があった
言葉の道は騒がしさを嫌い
軽薄な毀誉褒貶に心を泳がさず
己の表現と内心の真実との
合致するかしないか
の薄氷を
ひとり踏み行くべきもの
そのまゝ行きたまえ
と
赤彦さんに
囁かれたようだった
大正十五年七月岩波書店刊行の
アララギ叢書第三十二編
この遺稿歌集に
さらなる落着きの必要と
世間のいっそうの放棄とを
指し示され
後押しされたようだった
そのまゝ行きたまえ
と
赤彦さんに
囁かれたようだった
0 件のコメント:
コメントを投稿