2015年8月18日火曜日

もぉ!詩人さん!なんだからぁ!もぉ!




愛する対象の中のなにを、一体、我らは愛するのか?
       アルフレッド・ド・ミュッセ 『ナムナ』
Dans un objet aimé qu’est-ce donc que l’on aime ?
Alfred de Musset Namouna



たゞの語り口の妙だけで
詩を書いたつもりになっている人が多過ぎるこの国では
助詞や助動詞を
ちょっと工夫して軽くしたり
あるいは60年代ふう
70年代ふう
80年代ふうにすると
ワッと読者は増えたりするが
たゞそれだけのことで
90年代ふうの小室哲哉調にしたりすると
一気に読者は離れる
オールドファッションドの言語趣味の読者たちは

ましてや
マラルメ調やブルトン調ともなると
老いも若きも
もう平成人たちには
付きあえる体力は払底しているらしい
ひょっとしたら
ラフォルグ調あたりを
リバイバルさせるのが好適だろうか

詩は(あるいはお望みならば
言+寺は)
人生観の衝突である他なく
衝突のさなかからたまに停戦地域が発生したりする
そんな稀な地帯で
さっきまでの敵同士が束の間憩って
こいつ
案外話せる奴だったんだな
と思いあったりする

ぼくはやっぱり
その人なりの日常に埋没し切っている人たちが好きではなく
バーや居酒屋ばかりに行っている煙草臭い人たちも好きでなく
かといって酒も飲まない喫茶店主義者たちも好きでなく
いや喫茶店なんてダサイよカフェでしょカフェという連中も嫌で
たまには散財できない人たちも好きでなく
どこかの宗教に固まった信者は大嫌いだが
真言立川流はもちろんのこと
魔術や瞑想修行に数十年費やしてこなかったような
甘ちゃんたちは相手にする気もないし
うんざりするほどの愛人沙汰も経験してこなかった小市民は
もちろんバカらしくて相手にできない
まるで色恋に通暁したかのように自慢する成金クラブの奥のオヤジ
歯のスカスカやシミの多い顔を見ているのも嫌だが
饐えた臭いのどうしても隠せない中年女たちが着飾って
美しくもない手指に指輪をいくつも嵌めたり
似合ってもいないブランド物をやはり似合わない着方で肩にかけ
油の黄色く染み上がって来ている白目で
あたりの若い男たちを見まわすのを見るのも好きでなく
裕福な老年の女性たちの手の甲に血管が黒々と沈んでいるのも
あまり楽しく見ていられるほうでもない

だが
もし現代の世の中にマダあるとすれば
詩というのはそうした連中の棲息するあらゆるところにある
安い油の豆腐料理を食べた後の中年風俗嬢の歯の食べカスの中に
即座に詩を見つけられないのならば
断言するが
そいつは詩人ではありえないね
逃げるなよ
詩人!
ただちにお前はお前のペニスをお前ふうに出して
その中年風俗嬢の食べカスだらけのお口で
お前ふうにフェラしてもらうべきだ
お前ふうに立たないのかい?お前ふう詩人?
体の臭うあらゆる中高年に向かって
死臭漂う終末病棟で
大災害や国際武器商人ら御用達の戦乱の惨状の中で
なおも唾液や粘液の交換たる“愛”(スピノザの定義)とやらへ
心身を投入し続ける勇気もなくて
なにが詩人!
なにが詩!
ヤワな甘い涼やかな小市民的な“へいわ”なほわほわな
ふわふわな
かっわいいところで
なにかコセー的なちっちゃな発見したつもりでメモしちゃって
バーコード付きのちっちゃな詩集
またつくっちゃおうかな
どこのブティックに置いてもらおうかなぁ
わきにはハーブティーとか
マカロンとか
いっしょに置いてもらうとキレーかもぉ?
なんて
水色の妄想しちゃって
もぉ!
詩人さん!なんだからぁ!
もぉ!



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