父は五月の生まれだったので
祖母の妊娠は夏の暑い頃か
秋のはじめといっても
やはりまだ暑い頃だっただろう
朝から暑いその日
井戸の水を汲みに出た若い祖母に
わたしは路地で出会ったのだが
祖母にはわたしは見えなかったらしい
まだ妊娠を感じていない彼女に
わたしは宙から指で祝福を授けた
はじめての子はわたしへの道となるだろう
労苦多い時代が待つが健やかに、と
人の体を持つ前からたびたび
時間と空間に捉われずに
わたしはこの地方に舞い来たったが
その日は最も強い顕れであった
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