2015年12月8日火曜日

たぶん たましいを

  

大事に思うメールに
よく考えて
ことばもよく選んだ上で
返信しようと思うと
かえって
いつまでも書けなくなってしまう
事務的な返信や
アポをどうするかとか
そんなメールなら
すぐに返せるのだけれど

メールひとつ書くのにも
混んだ電車の中ぐらいしか
時間がとれない

おゝ晩秋よ
おゝ初冬よ

ゆっくりと時間をかけて
お茶を淹れて
小さな菓子なども
小皿に載せて机に置きながら
大事な手紙に
お気に入りのペンを使って
返事を書いていた頃の
あの心持ちを
あの雰囲気を
心の中で
思い出の中でばかり
わたくしは蘇らそうとする

揺れのやまぬ
混んだ暑い電車の中で
ぎっしり立ち詰めになって
たいていの人が電子画面を見つめて
みなそれぞれ
自分だけの遠い故郷へ
今でなく
此処でなく
憩えるどこかへ
たぶん
たましいを
…たましいを?
…そう
たましいを
飛ばしている
こんなあまりに特殊な
そしてあまりにありふれた
此処
環境のさなかで




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