ちょっと前に
いや
もうだいぶ前になるけれど…
知っていた女の子は
時どきひどい欝が来ると
あゝ寂しさが
寂しさの雲が流れてきた
と言っていた
そうかい?
寂しさは流れてくる雲かい?
ええ、
雲みたいな
霧みたいな
だから待っているの
また
流れて行ってしまうのを
雲も
霧も
きっと流れ去っていくから
ずっとなんて
留まりはしないから
そんな雲や霧に
取り巻かれている時には
取り巻かれている時には
家に引き籠って
膝を抱えていたり
壁に寄りかかっていたりする
本も読めないし
テレビも見られない
窓から外を眺めるのも
つらいぐらいなのだという
電話にも出ない
メールにも出ない
連絡が途絶えて
だいぶ経った後で
ひょいと顔を出した彼女は
いつも晴れやかだった
やあ、雲が行ってしまったんだね
快晴みたいだね
ええ、すっかり晴れました
そんな言葉を
ぽつぽつ
お手玉しあいながら
真夏の大噴水の縁なんかに
座っていたことも
あったっけ
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