ふいに
絞めつけられるような懐かしさが来て
寂しすぎるような
悲しすぎるような
あゝ
あれはあそこの温泉場で
あの時
あの人と…
など思いながら
あの人を
心が
こんなに懐かしんでいるのか
と確かめるのだが
そうではない
自分を懐かしんでいるのだ
あるいは
自分とともにあった
時間を
あの人も
そんな自分の内にあって
そんな時間の内にあって
あゝ
すべては自分だった
あの時の湯の音も
きらめきも
長い廊下のほの暗さも
窓から見える闇の森も
すべては自分だった
なにからなにまで
あるのは自分だけだった
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