2016年2月2日火曜日

すべては自分だった



ふいに
絞めつけられるような懐かしさが来て
寂しすぎるような
悲しすぎるような

あゝ
あれはあそこの温泉場で
あの時
あの人と…
など思いながら

あの人を
心が
こんなに懐かしんでいるのか
と確かめるのだが

そうではない
自分を懐かしんでいるのだ
あるいは
自分とともにあった
時間を

あの人も
そんな自分の内にあって
そんな時間の内にあって

あゝ
すべては自分だった
あの時の湯の音も
きらめきも
長い廊下のほの暗さも
窓から見える闇の森も

すべては自分だった
なにからなにまで
あるのは自分だけだった




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