口語の時代はさむい。
荒川洋治
にっぽんの詩は
感傷でなければならないのに
思わず涙に潤むような
たっぷりの感傷を醸し出せない人たちが
詩ででもあるかのように
むずかしい言葉を連ねているものだから
流行らなくなってしまった
にっぽんの詩
みんな
えぐり出すように
掻き出すように
泣いて流し出したい心の滓があり
凝りがあり
それをきれいに
助けてくれる言葉が欲しいのに
作ってくれる人がいない
詩人たちにこそ
期待しているというのに
いろいろなことがあっても
たっぷりと言葉の涙で泣ければ
それでさっぱりと
また生きていけることがある
すっかりと言葉で死ねば
それでさっぱりと
蘇られることがある
感傷せよ
にっぽんの詩
むずかしそうな言葉を並べてないで
しっかりやっておくれよ
お涙ちょうだいを
素朴でも
しっとりと
お弔いの歌うたいを
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