死は、ない。
アンドレイ・タルコフスキー
遠くに明かりが見える
小さいがはっきり見える
ここはちょっと小高い
風が強まる時もあるが今は穏やかだ
四方は見えないが三方が見える
夜なので今は真っ暗だが
あの明かりは見える
まわりが真っ暗なのでよく見える
見まわしていても
空に目を放っても
ふと気づくとなにも考えていない
そんなことが多い
目だけになっている
耳だけになっている
肌だけになっている
まだ体に居るのだなと気づき直したりする
数ミリの肌一枚のこちら側
そうとわからぬ間に
むこう側にいる時もあるのかもしれない
はみ出している時もあるのかもしれない
はみ出しぐあいの多寡で
生死が決まるのか
それとも
生死は別のものか
まだこちら側にいるからこんなことも考えるのか
向こう側に行ってしまっても
おなじことを考えたりするのか
薄い肌一枚
そこが岸辺
むこうが彼岸
こちらが此岸
しかし
岸にばかりこだわっていても
しょうがないじゃないか
岸からもっと離れた名もないところ
名づけようもないところ
そういうところに手足を取られ続けるのが生だったように
岸のむこう側に離れていったところにも
名づけようのない水中や
浅場や深みや浮島があるだろう
なんだ
こっちもやはり生じゃないかと
行ってみれば
気づくのだろうか
どこに居ても
問題は居場所じゃなかったんだと
気づくだろうか
0 件のコメント:
コメントを投稿