よく通った図書館のむかし通りの
書架のならびの深くへ奥へ行くと
以前たびたび手にした親しい本が
あゝ同じところにまだ立っている
不躾な書き込みをしたわけもなく
自分の痕跡を示すものとてないが
次々開いてみるページのどれもが
あれら昔の刻々の時間の栞のよう
あの頃ページを開いていた自分は
これらページを蝶番のようにして
未来の自分のまなざしに会うとは
もちろん想像だにさえしなかった
あゝ時は過ぎゆくと誰もが言うが
永遠のものでないとはいえ消滅に
抵抗し続ける物質たちにこの頃は
驚きばかりか敬意さえ払わんほど
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