2016年3月13日日曜日

カボチャの煮汁

  

コーヒーもお茶も飲まずに
昨晩煮たカボチャのいっぱいの煮汁を
栄養豊富な格好の飲み物とばかり
マグカップに注ぎ注ぎしながら
今夜も朝方まで
フランス革命の文献を読み継いでいる

たまの気晴らしに数分
こんな詩のかたちのものを書いたり
今どきの遊び道具
facebookだのtwitterだのを
ちょっと開いてみたりして
ちょこちょこ
卑小なおふざけや
自分の人格とも気質ともかけ離れた
論理や価値観を装って
仮面舞踏会なみの
どこか微妙に淫猥な愉しみ

なん足しにもならぬ
そんなものにもいつも通り
すぐに飽きて
また戻っていく革命文献
革命家ルドゥレールの考えなどに
今日ははじめて出会って
古びぬ新鮮な感触を喜んだりしている

たとえば
平等こそがいっそうの差別を作り出すと彼はいう
革命の柱を根こそぎ破壊する鋭く面白い思考
というのも
平等は才能の競争に広大な場を拓くし
社会が均質になればなるほど
ますます異質な人間性が誕生し続けていくわけで
激しい能力競争や差異化の競争が続き
無限の差異化の競い合いが社会には生じて
深刻な差別社会が未来永劫準備され続けていく
まったく自由万歳、平等万歳さ
そう彼は言うのだが
これをなんと彼は
テルミドール9日のロベスピエール派没落の直後に発想している
書いたのは1815年頃
出版は1831年*

夕飯づくりに煮出したカボチャの煮汁をお茶がわりにして
今の日本じゃ誰も読まないこんなのを
しっかり読み続けて
自由博愛平等
国民主権
民主主義
そんなお題目の内部事情がフランス革命の頃からいい加減で
おざなりでご都合主義で利害まみれで
理論的にもまったくのデタラメだったのを
ひとつひとつ読みつぶして確認していく愉しさと
有意義さに
二度と戻らない時間の一秒一秒を
わたくしは注ぎ込んでいる

それに
けっこう美味しいんだよ
冷えてもね
カボチャの煮汁って


*Pierre-Louis Roederer, L’Esprit de la Révolution de 1789, Paris, 1831.




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