ふつうの人々の心が生きのび続けられるとは思えない
わたくしは駿河昌樹なる者の脳の一部と指を借りて
このことを先に告げておく
人間を人間が捨てようとするがもちろんそれはできない
人間を捨てたければ自分を捨てる他ない
絶望死が世界に溢れることになる
人々は見たくなければ目を逸らしてこれまで生きてきたが
あまりにありふれた光景になるのでもうそれはできない
目をつぶることも耳を塞ぐこともできない
しかし見続ければ心は死に魂は死に身体も死ぬだろう
そのようにしてたくさんの人々が死ぬ
死に耐える村や街も出てくる
どうして人間に生まれたのかと地球全体が嘆く
悲惨の濃淡はあるが悲惨を逃れうる地域はない
家から出れば行き倒れがあり死病に蕩けた手が足を掴む
それを助ければ生きている者もすぐ病に陥るので
ふつうの人々が人を殺しながら生きねばならなくなる
人を川に蹴落としたことのない生者はひとりもいなくなるだろう
人を穴に埋めたり山にして焼いたりしない者はいなくなるだろう
それでも生きていくための意識を人々はどう創り出すのか
この暗過ぎる霧は数十年続き大雑把にしか歴史にも残らない
すべてが途絶え気味になり多くが崩壊し簒奪され燃やされる
この濃霧が来ればもうなにひとつ見晴らすことはできなくなる
生きていく意志だけを鍛えておくように
人をどれだけ殺しても生きていく意志を持つ者だけが生きていく
人は自分ひとりしかいないと思わない者は先に殺される
しかしどれだけ多くの生き延びるべき人々が先ず殺されていくこと か
悲鳴さえ出さずにブロイラーのように宿命に殺されていく
この悲惨の極致を伝える言葉を
言葉よ
さらに創り出しておけ
そうしなければ誰ひとり生き残る心を支え切れないだろうから
0 件のコメント:
コメントを投稿