2016年7月3日日曜日

天使たちが来ているのです…


うちの玄関ちかくに
聖母マリア像があるのは
ルルドを訪れた際
わけもなく
涙があふれ続けて
小一時間ほど
とまらなかったから
それを記憶しておくために
お土産屋で高くない像を
ひとつ買ってきたから

夕暮れ近くだったか
聖堂のまわりには
不治の病に侵された人びとが
世界中から集まり
ミサに参列していた
担架で運ばれてきた人たちや
車椅子で押されてきた人たちも
いっぱい集まっていた

カトリックでもない私は
川にかかった
小橋に腰かけながら
遠巻きに
その光景を眺めていた
あんなに信じ切って
遠く世界中から
運んできてもらっているんだ
信じているんだ
あの人たち…
そう思いながら
関わりのないこととして
眺めつづけていた

ところが
しばらくして涙が
心が動かされたわけでもないのに
涙が溢れ出して
どうにも止まらなくなった
涙腺が壊れたりするということが
ほんとうにあるのか
思いながらハンカチで拭きつづけ
拭きつづけ
拭きつづけても
涙は溢れつづけた

いっしょにいた
エレーヌに
ほら、涙が出ているでしょ
ぼくはどうしたんだろう
悲しいことも嬉しいことも
べつに急に来たわけでもないのに
ほら、涙が勝手に出ている
ぼくはどうしたんだろう
こんな不思議な涙
はじめてだよ
そういいながら
溢れつづける涙を
もう
そのままにしておくようになった

天使たちが来ているのです…

ひっそりと
エレーヌは言い
天使たちに向かってのように
天のあちこちに
ゆっくり目を向け
それから遠くのミサのほうに
まなざしを
また
向けなおした



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