2016年7月14日木曜日

ミレノスとかクレノスポンテスとか



さっきまで豪雪だったけれど
夏の東京であれほどの雪というのは
もちろん珍しいことでもない
ぼくらは骨の太い傘をさして
ちょっと切らした炭を長野まで買いに出たけれど
行きも帰りも歩いてきたわりには
たったの四十分しかかからず
うちで寒がっていたワニのウィリアムも
大喜びで迎えてくれた
薪はいっぱいあるのから
火をつけたままで出かけてもよかったが
やっぱり火の用心はしないとね
ウィリアムが焼きワニになったら
かなしいものね
それにしても帰りつく頃には
雪もやんで心の深くまで麗しくなるような
深く巨大な夕焼け
まるでぼくらがかつて過ごしたことのある
地球でなんどか見たような
夕焼けのようだねと
呟いたのはリチャード
きみだったね
ほんとうにそうだ
なかなかいい星だったけれど
あんなにさびしいことになってしまって…
とぼくも呟いてしまったら
まぁ、あれはあれさ
陸続と星は生まれ続けるのだし
ぼくらとしては今
この星のいいところを
どんどん発見していかないとね
とイワンが
なかなかいいことを言ったんだった
まったくそうだな
昔の星を偲んで
東京とか長野とか
そんな名前を
森のどこまでも続くこの原野の
ちょっと開けた小さな高原に付けてみたのは
ぼくひとりの小さな感傷だけど
いずれ
そんな名前は
変えてしまうかもしれない
そうすべきだと思う
ミレノスとか
クレノスポンテスとか
もっとふさわしい
そんな名前に




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