さっきまで豪雪だったけれど
夏の東京であれほどの雪というのは
もちろん珍しいことでもない
ぼくらは骨の太い傘をさして
ちょっと切らした炭を長野まで買いに出たけれど
行きも帰りも歩いてきたわりには
たったの四十分しかかからず
うちで寒がっていたワニのウィリアムも
大喜びで迎えてくれた
薪はいっぱいあるのから
火をつけたままで出かけてもよかったが
やっぱり火の用心はしないとね
ウィリアムが焼きワニになったら
かなしいものね
それにしても帰りつく頃には
雪もやんで心の深くまで麗しくなるような
深く巨大な夕焼け
まるでぼくらがかつて過ごしたことのある
地球でなんどか見たような
夕焼けのようだねと
呟いたのはリチャード
きみだったね
ほんとうにそうだ
なかなかいい星だったけれど
あんなにさびしいことになってしまって…
とぼくも呟いてしまったら
まぁ、あれはあれさ
陸続と星は生まれ続けるのだし
ぼくらとしては今
この星のいいところを
どんどん発見していかないとね
とイワンが
なかなかいいことを言ったんだった
まったくそうだな
昔の星を偲んで
東京とか長野とか
そんな名前を
森のどこまでも続くこの原野の
ちょっと開けた小さな高原に付けてみたのは
ぼくひとりの小さな感傷だけど
いずれ
そんな名前は
変えてしまうかもしれない
そうすべきだと思う
ミレノスとか
クレノスポンテスとか
もっとふさわしい
そんな名前に
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