2016年7月15日金曜日

強く思わされる



見えないからだを持って
ひさしい

じぶんにも
見えないのだから
ちょっと動くのさえ
なかなか
むずかしい

廊下を通り抜けるのさえ
難儀する
足の指先をぶつける程度ならまだしも
膝がどのくらい
壁に近づいているのか
まったく見えない
肩がどこまで張り出していたのか
感じているのとは
いつも異なる

他人にも動物にも見えないから
こちらの領域に
連中は平気で入り込んでくる
こちらなど
いないと思い込んでいるのだから
足も平気で踏んでいくし
腹にも飛び込んでくる
わき腹や背には
いつも連中の肘が喰い込んでくる
それでも連中
なにも感じないし
手触りも覚えないのだから
どうにもならない

見えないからだのほうからも
どうやら
こちらのことは
まるで見えていない
感じられていない
からだを動かしているのは
はっきりとこちらなのに
動かされていると
思っていないらしい
まるでじぶん自身とでも
いうようなものがあり
そのじぶん自身が
じぶんを動かしているとでも
思っているらしい

こっけいな話だが
この光景を見続けていると
いろいろ考えさせられる
こちらだけは
じぶんがあるなどとは
信じまいぞ
そう強く思わされる



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