見えないからだを持って
ひさしい
じぶんにも
見えないのだから
ちょっと動くのさえ
なかなか
むずかしい
廊下を通り抜けるのさえ
難儀する
足の指先をぶつける程度ならまだしも
膝がどのくらい
壁に近づいているのか
まったく見えない
肩がどこまで張り出していたのか
感じているのとは
いつも異なる
他人にも動物にも見えないから
こちらの領域に
連中は平気で入り込んでくる
こちらなど
いないと思い込んでいるのだから
足も平気で踏んでいくし
腹にも飛び込んでくる
わき腹や背には
いつも連中の肘が喰い込んでくる
それでも連中
なにも感じないし
手触りも覚えないのだから
どうにもならない
見えないからだのほうからも
どうやら
こちらのことは
まるで見えていない
感じられていない
からだを動かしているのは
はっきりとこちらなのに
動かされていると
思っていないらしい
まるでじぶん自身とでも
いうようなものがあり
そのじぶん自身が
じぶんを動かしているとでも
思っているらしい
こっけいな話だが
この光景を見続けていると
いろいろ考えさせられる
こちらだけは
じぶんがあるなどとは
信じまいぞ
そう強く思わされる
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