ことばに軋みが出てきたので
立ち止って
昔した結婚を反省してみる
もう配偶者も親族も
ひとりも関係者の残っていない政略結婚だが
人に夢を見なかった頃だったので
幸せなものだった
パイプ煙草と嗅ぎ煙草を好んでいて
部屋にも衣服にも
煙草の香りが染みていた
蓮の花が美しい池が庭にあって
煙草を吹かしながら
よく夕暮れの光の中にひとりでいた
思い出そうとしてみても
昔した結婚の光景は
こんな程度
伴侶の愛称も
正式な名も
顔さえ
まったく浮かんではこない
住んだ家のことはいくらでも細かく語り直せるが
…そう
ひょっとしたら家というものと
結婚したのかもしれない
ともあれ
これまでした六十九回の結婚のうちの
これが最初の結婚
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