きょう きみは生まれた
もう 何十年にもなる
くりかえし くりかえし
めぐり めぐって
生まれた きょうに
また きみは立っている
いろいろなことが あった
とは くりかえすまい
言ったって わるくないが
なんども言ってみた 結果
言っても 言わなくても
おなじとわかった 言葉だから
よかったとか わるかったとか
けっきょく こんな運命だったとか
そういうのも くりかえすまい
過ぎてきた風景を ひとことに
ひと色に 決めつけるなんて
どうかしていると じぶんで
もう わかっているから
望んだこと やろうとしたこと
惹かれ続けたこと たぶん
愛した などと大仰に言っても
いいかもしれない こと
失われたこと 傷つけられたこと
かなわなかったこと すこしも
うまくなど 進まなかったこと
それらの どれもこれもが
くっきりと 輪郭を保ったまま
風景のなかの ポイントのように
今ではなっていると 見える
だから大事だなどと 甘いまとめに
さすがにもう 落し込まないのが
いまの きみのありよう
大事とか 大事でないとか
評価という気まぐれな そんな秤
勝手に左右に 触れるにまかせておく
きょう きみは生まれて
もう 何十年にもなるんだと
ほんのすこし ふり返る
くりかえし くりかえし
めぐり めぐって
生まれた きょうに
また 立っているのかと
まだまだ 動いてくれている
からだと こころと あたまとに
まずは 最大の感謝をしながら
ふしぎで 操縦のむずかしい
小さな複合体の 隅ずみまでを
感じ直そう つかみ直そうとする
からだと こころと あたまとに
まずは 最大の感謝をしながら
…それにくわえて たぶん
到るところで はっきり姿を現わし
導きどころか 道そのもの
道どころか じぶんそのものとなって
こころとあたまの 企てや計画へ
強引な手つきで 介入し続けてきた
宿命とも運命とも いわれる
あまりに必然な趣の あの偶然というもの
あれらにも いっそうの感謝を
しておかなければ ならないかと
滞在も もう何十年にもなる
いまのきみは つよく思っている
そんなきみを 見ている
なおも 見続けていく
内も外も 時間のへだたりも超えて
見続けていく このまなざし
これは 本当はだれなのだろう
きょう きみは生まれたと
きみはさっき 語り出し
もう 何十年にもなるのだと
少し感慨深げに 添えたが
そんな何十年より はるか前
きみの生まれる 以前から
見続けている まなざし
だれなのだろう などと
せん索する 必要などない
きみはただ 見られ続けていけ
くりかえし くりかえし
めぐり めぐって
生まれた 複数のきょうに
まだまだ何度も くりかえし
くりかえし 立ち続けていけ
そんなきみを 見ていくから
なおも 見続けていくから
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