晩秋から
初冬にかけて
しきりに奈良や明日香の奥地に
そぞろ歩きに出たくなる
そんな病も
どうやら癒えてきて
室生の人家の
庭先の木に生っているのでもない
柿の実を
上野の桜木町界隈で
眺めたりしている
秋から冬に
五回も六回も
明日香に出かけていた頃の
あの渇いた熱情
乾いた衝動は
なんだったのか
当麻寺の
中将姫の気味の悪いほど
生々しい
艶かしい肌の
像を見つめながら
あなたに誘われてきたのかしら
見えない因果に
惹きよせられながら…
などと
ひとりで問い続けていた
あの頃は
あれはなんだったのか
豪華さの
微塵もない小さなホテルや
民宿や
トラック運転手たちの泊る宿場を
転々としながらの
大和路行は
あれはいったい
なにに憑かれての
ものだったのか
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