まだ生きていたら
あなたは秋の街なかの
この柵の端に寄りかかって
色づきはじめた梅の葉や
桜の葉を眺めながら
野良猫がひょいと
そこらの茂みから顔を出すのを
待っていたかもしれない
ひさしぶりに晴れた
今日の午後あたり
あなたの見るはずだった
街のあちこち
新しくなっていく
都市のすみずみまでを
あなたのかわりに見続けながら
また秋か
あなたの逝った月が
また来るのかと
まるであなたであるかのように
歩きまわり続ける
そう
あなたの逝った後ずっと
こんなふうに
見歩いてきたから
わたしはわたしの見方を
たぶん失ってしまって
こうして見歩いているのは
空っぽになったわたし
どんなに街が変わっても
むかしのままでも
どうでもよくって
そんな
こんなは
むかしに戻りたいのでもなくて
あゝ二度と
戻ってこないものの
戻ってこないことの
せつなさになり切って
もうどこにもいない
わたしのわたし
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