2016年10月4日火曜日

あの誰もいない教室の闇の中へ



夜の授業がすべて終わると
すべての教室の見廻りや点検をし
建物全体の戸締りをして
本部事務所に戻ってくる時期があった

ときどき
教室の中であかりを消して
しばらく佇んでみることがあった
静寂の中でのその時の安寧は
とてもではないが
言葉ではいい表わせない

毎夜わずかな時間ながら
教室の闇の中に立ち続けて
あかりの中にいる重さばかりか
今回の生も思いも感覚も
みなきれいさっぱり脱ぎ落して
じぶんでない零のじぶんとなった

誰より不幸だと思っていた頃だったが
あの頃こそ幸福だったのではないか
幸福とはあれだったのではないか
今になればそうとしか思えず
あの誰もいない教室の闇の中へ
帰って行きたくてたまらなくなる



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