人って
どうしようもないところがあって
知りあいぐあいの網の目が
ちょっと込んでくると
水のように
空気のように
関わりあいの繊維に染み込んで
いつのまにか
じわっと
こちらを支配してくる
そんな人が
多い
本当に
好きなこと
嫌いなこと
主義
主張
すべきだ
阻止するべきだ
許せない
望ましい
断固なになに
絶対なになに
そんなことすべては
その人の趣味
馴染んできて癖になったもの
生きてきた過程でのごくごく私的な習い性
記憶にこびりついた仕草や雰囲気
あるいは単に
その人の自我のかたよりや
ゆがみ
その人がその人の圏内で
そんなことにご執心なのはかまわない
それがその人自身だと信じ
しがみつき
後生大事にくどくどと
反芻し
反芻し
しゃべりつづけていても
体臭の染み込んだ綿入れからあたりに漂う
じっとり老いた
おもい臭いのように
あたりに広がっていても
どうぞご勝手に
けれど
その人の薄肌一枚から外に出てしまえば
もう誰も
そんなことに真向きはしない
他人の内面は
恐ろしく淋しく救いようのないまでに
ただの雑音
あたり前のこと
他の人には他の人なりの
大量のそんな雑音が
薄肌の中にびっしり詰まっているから
冷たい人間のようにも
見られても
こちらを支配してくる人たちを
みんな
落していく時節もある
はっきり意識して
つれなくし
きっちりと計算し
してくれたことはちゃんとお返しし
してくれなかったことはちゃんと
これっぽっちも返さないように
正確に
一グラムの心情の誤差もないように
お役所仕事のように
振り払っていく時節もある
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