鼓動が速まるような
感銘といってよいものを受けて
その勢いで目が覚めたが
夢の中で
不慣れといえばあまりに不慣れな人の詩を見せられていて
言葉並べは自由だとはいえ
ひどいものだなあと思いながら
それでも最後まではと
字面を追い続けているうち
五連目あたりで
ふっと胸を突かれるようだった
なぜか
その連だけ
文字のポイントが小さくなっている
八行ほどある連だが
遠いように
文字が小さい
その連だけ
ワードプロセッサーの
使い損ねと思えたが
見続けるうち
これは
読み手のこちらの思いを
あらかじめ読み込んだ表記なのだと
じんわり
わかってきた
その連だけ
他の連とはちがう内容で
それまでの連のように読もうとすると
わかりづらい
理解の層を切り替えないと
焦点が合ってこない
焦点を合わせられるまで
気持ちがグッと遠ざかってしまう気になる
そんな状態が
あらかじめ
文字の小ささで表わされてしまっている
そう思った時
予期しなかった途方もない感銘を受け
眠っていながら
心臓の鼓動が速まって
起きてしまった
不慣れな人の詩だと
夢の中では受け取っていたが
起きてしまうと
もう
どんな人のものだったのか
顔も雰囲気も浮かんでこない
たゞ
こんなのを書いたよ
印刷したよ
どうだい?
どんな出来だい?
と直接渡され
ちょっと乱暴な
風のようなものが
こちらの手の甲にかかったのを
覚えている
この何十年
詩からは受けたこともない感銘を
不意にぶつけられ
まじまじと
五連目あたりの
小さな文字の並びを見つめていた夢の中へ
もう一度もぐり込もうと
身を横たえたまゝ試してみた
かなわなかった
詩の内容など
まったく記憶にも残っていない
が
感銘がつよく残り
鼓動は
治まらなかった
それどころか
小さな文字の並びの雰囲気を思い出そうとすると
鼓動は
また
ふたたび
高鳴り出すようだった
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