2017年2月6日月曜日

とりかえしのつかないことなどない



人を見たり
思い出したり
感じていると
その人の死ぬまでの日数が
だいたい
わかるようになった

もちろん
口にしたりはしない

中には
けっこう差し迫っている人もいる
それなのに
悠長に
どうでもいいことをやっていたりする
仕事であっても
その人にはどうでもいいこと
人間関係の維持であっても
その人にはどうでもいいこと
それが見える

そんなこと
はやくやめて遊びなさい
と言いたくなる

遊びなさい
ダラッとしなさい
時間の流れに
なにか価値のあるようなことを
ムリに流し込もうとせずに
手持ち無沙汰になりなさい
無駄に時間を費やしたように過ごしなさい

つよく
そう言ってやりたくなる

本当のことを言いましょうか

なにをしていいか
わからないで
こんなこと
あんなことを
して過ごしたりしていて
いいのか
よくわからず
時間がとにかく
ゆっくりと過ぎていくような時
そういう時だけ
人は生と時間と空間の秘密の敷居に近づく
そういう時だけ

テーマを失いなさい
目的や目標に向かって
時間を無駄にせずにちゃんと進んでいる
そんな生き方を今すぐ棄てなさい
生は標的に向けてはいけない
目標という制服を着せてはいけない

つよく
そう言ってやりたくなる

けれど言わない

たゞ曖昧に微笑んだり
奇妙にとられそうな間を挟んだりして
ほんのわずか
その人に微風のような干渉をしようとしてみるけれど
それだけ

死ねばわかる
なにかに向かって専一に努力したなどというのは
遠い旅に出て
たった一個の小さなお土産だけを
脇目も振らずに買い求めようとがむしゃらに駆けまわり
手に入れたら手に入れたで
また脇目も降らずそればかり眺めながら
大いそぎで戻ってきたようなもの
広大な大平原も見ず
無限に連なる山脈も見ず
打ち寄せ続ける波の見方にも惑わず
晴れや雨や曇りの
たえず変化し続ける不思議さに
心底めまいを起こすでもなく
世界のしくみがわかりきったつもりになって
あれはああいうものさ
これはこういうものさと
口先だけで処理する小利口さに
心の動きを小さく小さくしてしまって
バーコード付きでコンビニに並んでいる
どこでも買える大量生産品に
すっかり魂を変容させてしまったようなものだと

そう
死ねばわかる
それだけの
こと

だから
とりかえしの
つかないことではない

とりかえしの
つかないことなど
ない

霊も魂もひっくるめた宇宙では
そういうもの

とりかえしの
つかないことなど
ない



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