2017年2月21日火曜日

歯医者がBGMにクラシックをかけるべき理由



ラジオよりは
クラシックでもかけていてほしいと思うけれど
腕はいいから
この歯医者に来ているわけで…

けれど
今回ばかりは
ラジオ
やっぱりどうかな
危ないぞ
危ないときもあるぞ
と思ったのである

虫歯を削られていたとき
視聴者からのハガキを司会者が読み上げていて
「エルトン・ジョンみたいなおばさんが
「練馬の商店街にいます

「いるよねェ
「エルトン・ジョンみたいなおばさんって
と司会者は受けて
それから
「台東区にはミック・ジャガーみたいなおばさんとか
「ポール・マッカートニーみたいなおばさんは
「どこの区かな…
「とにかくいますよね
「けっこういるんだ
「ふつうにいるよね
などと続けていったのであった

けれど
そんな程度のことには
なにせ辛酸なめ夫さんでスレ切っているものだから
クスッともしない吾輩ながら
歯をガリガリやられている最中で
なにせ
アタマんなかは
たまたま
ちょっと暇だったからか
エルトン・ジョンおばさんや
ミック・ジャガーおばさんや
ポール・マッカートニーおばさんの
顔のありようや
商店街でさつま揚げなんかトングで抓んでいたり
笊から袋にニンジンを入れたり
レジでピッピッとやっていたりするのを
いちいち
想像してみてしまったのだナ

体の奥深くから
ウッ
ウッ
と笑いがこみ上げてきて
危なかった
危なかった
必死に
ウウンン
という
痰のからまりを解くような音に切り替えて
胸から喉のあたりで放散する努力をしたのであったが
危なかった
危なかった
深部から来る笑いというのは核兵器なみの威力を持っているもので
体の内部のいろいろな筋肉や器官の緊密な連携がないと
胸から喉や顎や口にかけて暴発しかねない

なにせ敵はガリガリやっているのである
いや
敵ではなかった
歯医者である
医者であるから救世主であるが
ヒトのかけがえのない歯をいい気になってガリガリ削っているんだから
敵かどうかと言えばやっぱり敵である
いや
敵は虫歯のほうか
虫歯はもちろん敵だが虫歯はヒトの歯を
平気で短時間でガリガリ削ったりしないから
どちらかといえば歯医者のほうが敵度は高いような気もする
となれば虫歯と歯医者と両方が敵であるのは確かなわけで
そんなふたつの敵に攻撃されて
ガリガリ
ガリガリ
キーン
などとやられているときに
ギャハハハハなどと破顔一笑したら頬っぺたにまで穴が開きかねな
開いたら治せばいいのだろうし
治す技術は現代の医療では簡単なもののうちだろうが
痛いのはイヤだな
もう痛いものはいっぱい抱え込んでいるしナ
だいたいタマシイの痛みときたら…

…なんとか抑えて
嵐になりかけた大気の乱れ程度に
喉の下あたりで必死に散らし
笑いの爆弾の爆発を阻止したものの
危なかった
危なかった
体の奥深くから
ウッ
ウッ
とこみ上げ続けてきて
危なかった
危なかった
必死に
ウウンン
という
痰のからまりを解くような音に切り替えて
胸から喉のあたりで放散する努力をしたのであったよ

「エルトン・ジョンみたいなおばさんが
「練馬の商店街にいます
なんて
歯医者ではやめてよォ
エルトン・ジョン
ホントにおばさんだし
そろそろ
おばあさんかも
なんて考えちゃうから
危ない
危ない
なにせ敵はガリガリやっているのである
台東区の
ミック・ジャガーおばさんとか
ポール・マッカートニーおばさんまで
続いて出てきちゃったんだからね

…ところで
ポール・マッカートニーおばさん
どこの区や街が似合うだろう
自由が丘じゃないと思うんだよね
清澄白河でもなくて
案外と駒込あたりじゃないかと思うんだけど
どうかね?



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