2017年3月4日土曜日

一度きりの時間の流れの中にいるというのに



わたしは冷たい人間かもしれない
そのように難じているであろう人たちを
幾人も知っている

しかし
他人の事情も心情も無視して
自分の好みや趣味や価値を
至上のものであるかのように押しつけてくる人たちを
わたしはどうしても許すことができない

人づきあいでは
はじめから拒否や遮断はしないものだから
相手の考えや好みを
そうですか
そうなんですかと
はじめのうちは聞き続けている
けれども
段々昂じてくるにつれて
これ以上受け止め続けるわけにはいかず
時間も割くわけにはいかないという段階に来る
そういう時にわたしは
時間がないので
とか
このところ忙しいので
とか
だんだん
フェードアウトしていくように距離を取っていくが
それでも稀に
いかにも鈍感に
ぐいぐい押し続けてくる人もいる
そうすると
わざと感情的に振舞って
いかにも
断ち切ると呼ぶにふさわしい対処をする

どんなことであれ
その人の庭の中でなら
いくらでも時間をかけて
労力も費やして
ぽつんとひとりぼっちで
価値を追っていてもらえばいい
他人を巻き込まずに
すこぶる孤独に
騒ぎ立てせずに

たゞそれを望むだけのことなのに
自分が価値と思うものに合流しないと
どうかしているとか
非人情だとか
愚かだとか
社会正義に反するとか
べらべら言い立て続ける人たちが
ほんとうに絶えないが

端的に言って
魅力がないからさ
とも思う
そういう人たちには

批判や愚痴や
ものの悪い面ばかり絶えず見つけてきては
少しでも大袈裟に言い立てて
だから
こうしなければいけない
変革していかなければいけないと
まァたいへんな気勢だが

どの時代にも
そんなふうにオダを上げて時間を浪費し
ひとりで心を集め
静まることを怠けて
たゞたゞ
死へと進んでいくばかりの人たちが
いっぱい
いっぱい
いる

二度と戻っては来ない
貴重な
本当に一度きりの
時間の流れの中にいるというのに




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