男の子には
どこか
おそろしかった
雛祭り
女の子の家に呼ばれ
雛壇の前に
神妙に座らされ
雛あられを貰ったり
菱餅を貰ったり
甘酒を飲まされたり
そうしながら
人形たちの顔を
ひとつひとつ
見つめ続けた
うちに帰って
眠りに就く夜には
雛壇に見つめ続けた
それらの顔々が
ろくろ首のように
夢うつつの中を
ひゅうひゅう
ふわふわ飛んで
ぎろぎろ
ぎろぎろ
こちらのことを
見つめてくるような
けれども
なによりこわかったのは
雛祭りが終わった後
木箱に仕舞われた
人形たちのこころ持ち
闇の中で来年まで
ながい一年間を
花見もできず
夏の日差しも浴びられず
花火も見られず
秋の紅葉も夕焼けも
冬の雪原も見られずに
樟脳臭いなかで
じっと忍んでいなくては
いけない暗いさびしさを
わがことのように
痛切に
痛切に
思いやってみる時
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