2017年6月2日金曜日

わたしひとりとなった都市で



年齢とともに
都市は
自分のためだけの博物館になる
あるいは
ちょっと古くなったデータの
保管庫に

どこの交差点でも
通りすがりに
かつて偶然再会した人々の姿が浮かぶ
駅での
数えきれない
別れ
いくらか建築は変わっても
そこかしこ
笑いながら壁沿いに近づいてくる
顔顔顔

たびたび入ったレストラン
入ろう入ろうと言いながらも
入らなかった店
雨に降られた歩道
ふいの大雪の
ひとひら
ひとひらを
誰かと見上げた
駅前広場の街灯の下

自分だけが
保ち続けることになってしまった
なんと
たくさんの記憶

いや
本当は記憶でなどなく
みんな
まだ
そこにいるのかもしれない

そう思って
振りむいてみることも
増えた

わたしひとりとなった
都市で



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