立ったまゝ待っている必要があって
手持無沙汰だし
目のやり場にも困るし飽きるので
クリーム色の壁紙を見つめたりしていた
見つめるうち
その壁紙が
小さな無数の人間の顔のような
細かいレリーフでできていると気づいた
見れば見るほど
まるで地獄や煉獄の人間の顔顔顔が
これでもかこれでもかと
押し合いへしあいして並んでいるよう
子どもの頃に
よく天井や布団や畳などを
間近に見つめ続けて
こんな発見を続けていたのを思い出した
しばらく見続けた後
わざわざこんなところに立って
待っていなければならない理由へと思いは戻り
壁紙の無数の顔顔顔から目を離す
なんで見つめてしまっていたのか
こんな小さなことなどどうでもいいのに
―そう思った瞬間、「あっ、なんと
ぼくはダメになってしまっていたのか
こんな小さな壁紙の顔顔顔と
ここで待つことになった人間関係的事情や
社会的事情とをこんなに酷く差別して
壁紙の顔顔顔を捨てるなんて」と恥じた
0 件のコメント:
コメントを投稿