2017年6月12日月曜日

壁紙の顔顔顔を捨てるなんて



立ったまゝ待っている必要があって
手持無沙汰だし
目のやり場にも困るし飽きるので
クリーム色の壁紙を見つめたりしていた

見つめるうち
その壁紙が
小さな無数の人間の顔のような
細かいレリーフでできていると気づいた

見れば見るほど
まるで地獄や煉獄の人間の顔顔顔が
これでもかこれでもかと
押し合いへしあいして並んでいるよう 

子どもの頃に
よく天井や布団や畳などを
間近に見つめ続けて
こんな発見を続けていたのを思い出した

しばらく見続けた後
わざわざこんなところに立って
待っていなければならない理由へと思いは戻り
壁紙の無数の顔顔顔から目を離す

なんで見つめてしまっていたのか
こんな小さなことなどどうでもいいのに
―そう思った瞬間、「あっ、なんと
ぼくはダメになってしまっていたのか

こんな小さな壁紙の顔顔顔と
ここで待つことになった人間関係的事情や
社会的事情とをこんなに酷く差別して
壁紙の顔顔顔を捨てるなんて」と恥じた



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