2017年9月15日金曜日

さんざんつき合い続けるのだよね


ながくながく
歌謡界を席巻し続けた有名な作詞家が
晩年
じぶんの本当の思いを吐露し
詩を書いた

それを見てみたら
酷かった

その作詞家の
あれほどの言葉づかいの才能が
どこにも見られなかった
なにも書いたことのない青年が
はじめて思いのたけを
慣れない手つきで
並べていったような文字の並びだった

フィクションや
仮面というものの
なんというありがたさ
力の引きよせ

じぶん
などというものも
フィクションで
仮面に過ぎないけれど
とりあえず
じぶん
などと呼べるその虚構を使って
まるで
すこしは本当の思いを語っているかのように
しかも
効果的に
言葉並べをしていくのは
これはこれで
至難のわざ

…もちろん

できなくってもいい
そんなことは

つき合わなくってもいい
そんなものには

じぶんの
じぶんの
じぶんの
じぶんの
じぶんの
じぶん
………
あたりの
じぶん
とだけ
つき合っていればいい

のだが
なかなか
出会えないのだよね
こいつに

だから
うそっぱちの
じぶん
借り物の
じぶん
他人たちの
じぶん
さんざんつき合い続けるのだよ



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