2017年9月13日水曜日

『シルヴィ、から』 16

 複声レチタティーヴォの連続のみから成るカンタータ叙事詩
 [1982年作]   

 (第十一声)  


 ぶつぶつと、物知り顔に語る声だな。
 こいつのために、男の動きがわからなくなってしまいそうだ。

 男はもう荷物を纏めて部屋を出た。階段を静かに下りて、今、宿屋の者に勘定を済ますところだ。

「おや」と宿の者が言った。
「お連れの方はどうなすったんです?」



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