2018年2月11日日曜日

お元気ですか?



今となっては
この人生でもっとも古い友となったヨーロッパ人から
月に入ってようやく新年のカードが届き
(中国じゃなくて日本なんだけどね、ここは…)
と思いながら
東アジアの国と国の文化の小さな違いになど
全く興味も示されず何十年も続いてきているかのような“友情”
毎年ながらに深い苛立ちを抱えるものの
事細かに説明するのも面倒臭すぎるし
あいも変わらぬ型どおりの挨拶を返すことで
新年の挨拶事情は収束させていくことに
結局今年もなっていくことになるのだろう
ほとんどの日本人どうしでの当たり障りない型どおりの
なにひとつ語ってなどいない挨拶のカードや
メールなどのやりとりと同様に
…そう、
日本人たちとの間でさえ
心だの魂だの
そういうものを少しは感じさせるような挨拶のやりとりは
たぶん
数十年交わしたことはない…

とはいえ、相手の国の言語の決まり文句のひとつ
たとえば初級や中級の作文や会話でなら
身に染み込ませて使えるようにしておかないといけない
「~のことを考える」なる表現を多用して
「ことにこの年末年始はあなたのことをたびたび考えた」
と太字の万年筆で優雅に記されているのを見るにつけ
また
相手の住む美しい地方の風景写真のカードの
たっぷりした厚紙の豪奢さを指の腹で確かめたりするにつけ
相手が確かに記しているとはいえ
この「あなたのことをたびたび考えた」には
おうおうにして
たいした実態などなくて
こう書いておきさえすればいいだろうという時に
まことに便利なものであるのを
この言語との数十年のつき合いの中で痛感してきた心にとっては
ああ、
言葉とはなんと寂しいもの…
いかにも力ない本音を
また
洩らしてしまいそうになる
二月もはや
十日過ぎとなる
早春の候

…お元気ですか?
…このところなかなかお会いすることもままならぬ
…いや
…ひょっとしたら
…まだお会いしたこともない
…わたくしの大切な方
…お元気でおられますか?
…春が近づいてくるたび
…あなたさまにお会いできそうな気持ちがするのです





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