2018年2月8日木曜日

これからまた大きな薪をひとつ暖炉に



この場所に吹雪はないが
今夜
わたしたちが千年前あれほど幸せだったあそこには
雪どころか
氷の矢が
束になって降り注いでいるだろう       

おまえの名を呼ぼうにも もう 最初の発音さえ忘れてしまっていて
声を溜息のように発しようとしても 今
ここに恋歌は構成されようもない

しかし 心よ わたしは千年経た今も
わたし
と発語しようとし
万人のものであるこの一人称を細く通過して
わたしたちだけのあの場所に戻り行こうとする

無駄な物語をつけ加えるのを
雪のように 氷の束のように 清潔に
禁じておこう 心よ 
吹雪の今はないこの場所にあるのをさいわい
わたしは静かなこの広い居間(四隅には
いかにも物語で埋められるにふさわしい闇が蟠っている…)で
これからまた
大きな薪をひとつ
暖炉に加えようと思っている



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