2018年12月13日木曜日

たぶんいまのじぶんも



寒くなってきた日々のうちの
ひとつの日
きょう
もう室温は15度くらいなのに
まだ暖房をつけず
涼しさを感じ続ける

思い出される
寒かった日々の数々

数年前
十年前
数十年前
と思い出はさかのぼり続け
しあわせな寒さだった
幼少時の
冬の日々に到る

……おや、
家に誰もいないのはどうしてか
みんな
買い物にでも出たのか
ひとり
風邪でもひいて
灯油ストーブのあかあかと燃える部屋で
夕ぐれ
まったくの異界につれ去ってくれる
ぶ厚い本を
ときどきは退屈もしながら
読み続けているのか
テーブルには
みかんがいくつか置いてあって
その小さなオレンジ色が
この世の冬の幸福そのものに見えている……

思い出のなかの
その少年に
なにか
呼びかけようと思いながら
なにを言ったらいいか
なにを言わないようにしたらいいか
まよったまゝ……

たぶん
いまのじぶんも懐かしく見つめられている
もっともっと
時間を経た後のじぶんから

たとえ
死のまぎわのじぶんであるにしても

あるいは
からだやいのちを
すっかり脱いでしまった後のじぶんであるにしても



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