2018年12月3日月曜日

第二代ロチャスター伯爵ジョン・ウィルモットへの線は発生した


  
日本橋TOHOシネマズで『ボヘミアン・ラプソディ』[i]を見ながら
はじめて買ったクイーン[ii]のシングルは「キラー・クイーン」[iii]
裏面には「輝ける七つの海」[iv]が入っていて
いい曲だったな、あれも
と思ったが
あとで調べると
裏面の曲は「フリック・オブ・ザ・リスト」[v]となっている
ながいながい時間の思いちがい!

どう思い出し直そうとしても「キラー・クイーン」と
「フリック・オブ・ザ・リスト」がいっしょになっていた感触は
甦って来ず
ちょうど「輝ける七つの海」も流行っていた頃の
「キラー・クイーン」とそれとの印象をラジオからつよく受けての
時代にぴったり貼りついての
思いちがい!

買ったのは
その頃住んでいた南浦和[vi]
      という
      ところの
           駅の[vii]
東口駅前のレコード店で
     小学校の級友だった白水明くんの
     お母さんの経営していた洋品店の
      となりの店だった

いくらもない小遣いから
買うのはおもにザ・ビートルズ[viii]のシングルだったり
ちょっと豪華にクラシックのLPだったりしたが
ラジオで聴いて心にかかってしかたがなかったクイーンのものも
散財覚悟でどうしてもくり返し聴いてみたくて
「キラー・クイーン」を買ってしまった
買ってからほんとうに「買ってしまった…」
「買ってしまった…」
「買ってしまった…」
「買ってしまった…」
後悔のような
航海のような
ちょっと荒波立った思いを抱いて帰って行った

いまから思うとふしぎなことに
学校友だちには
「ああ、あれもいいね」という程度以上のクイーン好きは
ひとりもおらず
まるで
ひとりでクイーンをひそかに支持していないといけないような
まるで
あの17世紀の天才詩人
リバティーン
フランス語でいえばリベルタン
の権化
第二代ロチャスター伯爵ジョン・ウィルモット[ix]
現代にむかしのままの姿に近く現われ直したかのような装いに
わけもわからなくなるような恍惚感を与えられ
ひとりでイギリス詩の歴史に強引に引き込まれる思いだった

ボードレール[x]とランボー[xi]の先駆者ともいわれる
ジョン・ウィルモット
に出会うまでには
まだまだながい時間がその後必要だったが
20世紀的なみごとな先ぶれを演じてくれたクイーンに
20世紀的郊外の南浦和というところで
ラジオの電波ごしに
出会い
 そこの
地の
駅の
東口駅前のレコード店で買ったレコードから
針の滑りから発生する摩擦音ごしに出会い直した

小学校の
 級友だった白水明くんの
お母さんの
経営していた洋品店の
 となりのレコード店で買ったレコードから
第二代ロチャスター伯爵ジョン・ウィルモット
                             への線は発生した



[i] Bohemian Rhapsody(Bryan Singer, 2018)
[ii] Queen
[iii] Killer Queen
[iv] Seven Seas of Rhye
[v] Flick of the Wrist
[viii] The Beatles
[ix] John Wilmot, 2nd Earl of Rochester
[x] Charles Baudelaire
[xi] Arthur Rimbaud




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