日本橋TOHOシネマズで『ボヘミアン・ラプソディ』[i]を見 ながら
裏面には「輝ける七つの海」[iv]が入っていて
いい曲だったな、あれも
と思ったが
あとで調べると
裏面の曲は「フリック・オブ・ザ・リスト」[v]となっている
ながいながい時間の思いちがい!
どう思い出し直そうとしても「キラー・クイーン」と
「フリック・オブ・ザ・リスト」がいっしょになっていた感触は
甦って来ず
ちょうど「輝ける七つの海」も流行っていた頃の
「キラー・クイーン」とそれとの印象をラジオからつよく受けての
時代にぴったり貼りついての
思いちがい!
買ったのは
その頃住んでいた南浦和[vi]
という
ところの
駅の[vii]
東口駅前のレコード店で
小学校の級友だった白水明くんの
お母さんの経営していた洋品店の
となりの店だった
いくらもない小遣いから
買うのはおもにザ・ビートルズ[viii]のシングルだったり
ちょっと豪華にクラシックのLPだったりしたが
ラジオで聴いて心にかかってしかたがなかったクイーンのものも
散財覚悟でどうしてもくり返し聴いてみたくて
「キラー・クイーン」を買ってしまった
買ってからほんとうに「買ってしまった…」
「買ってしまった…」
「買ってしまった…」
「買ってしまった…」
と
後悔のような
航海のような
ちょっと荒波立った思いを抱いて帰って行った
いまから思うとふしぎなことに
学校友だちには
「ああ、あれもいいね」という程度以上のクイーン好きは
ひとりもおらず
まるで
ひとりでクイーンをひそかに支持していないといけないような
まるで
あの17世紀の天才詩人
リバティーン
フランス語でいえばリベルタン
の権化
第二代ロチャスター伯爵ジョン・ウィルモット[ix]が
現代にむかしのままの姿に近く現われ直したかのような装いに
わけもわからなくなるような恍惚感を与えられ
ひとりでイギリス詩の歴史に強引に引き込まれる思いだった
ジョン・ウィルモット
に出会うまでには
まだまだながい時間がその後必要だったが
20世紀的なみごとな先ぶれを演じてくれたクイーンに
20世紀的郊外の南浦和というところで
ラジオの電波ごしに
出会い
そこの
地の
駅の
東口駅前のレコード店で買ったレコードから
針の滑りから発生する摩擦音ごしに出会い直した
小学校の
級友だった白水明くんの
お母さんの
経営していた洋品店の
となりのレコード店で買ったレコードから
第二代ロチャスター伯爵ジョン・ウィルモット
への線は発生した
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